このページでは、具体的な飼育方法とは別に、フトアゴに関する全般的な情報をまとめます。
チャチャッと、大雑把な概要〜野生での生態:
フトアゴヒゲトカゲとは、オーストラリア出身のめっちゃ可愛いトカゲ、ええ。アガマ科アゴヒゲトカゲ属。昼行性。昆虫も草木も食べる雑食。
学名はPogona vitticeps、英名はCentral Bearded Dragon、または、Inland
Bearded Dragon。ラブを込めて、Beardieとも呼ばれるよ<ヒゲちゃん、みたいな。
オーストラリア中央部から中南部までの乾燥した森林、低木地、岩石砂漠に広く分布。<ココちょっとポイント。砂漠は砂漠でも、サラサラした砂の砂漠じゃなくて、ゴツゴツした岩石の砂漠。だから、床材に砂を使うのは、自然に近いとは言えない。詳細は飼育方法の「床材」を参照。
威嚇や求愛の際には、アゴを黒くして膨らませる。温度、気分、体調により、体色を微妙に変える。尻尾は切れない。垂直面は登れない。鳴き声は出さない。
夜は岩や草木の間などで寝て、朝になるとノソノソ出て来て、木の枝や岩の上で日光浴して体を温め、昆虫や草木を食べる。午前中〜お昼過ぎが一番活動的な時間。午後の暑い時間はしばらく日陰に隠れ、また涼しくなった夕方に出て来て日光浴。夜はまた岩や草木の間へ。
群れを作らず単独行動、一緒になるのは交尾の時だけだが、日光浴スポットや採食スポットには複数の個体が集まることもある。ただし、そんな時も群れを作る動物のように食べ物を分け合ったり一緒に遊んだりのコミュニケーションはなく、明確な支配関係が生まれるだけ。例えば日光浴スポットなら、強い個体がより高くより日当たりの良い場所を陣取り、他の弱い個体たちはおとなしくその下に佇む、みたいな。それで、たまにチャレンジャーがボスに挑戦して、ボビング合戦開始!どちらかがアームウェービングで降参を示せば終了だけど(ボビングやアームウェービングについては、下記の「行動&気持ち」を参照)、どちらも引かない場合は本格的なバトルとなる。<というわけで、同じケージでの多頭飼いはホント危険です。詳細はこちら。
1歳半で性的に成熟する。繁殖期は春。オスがボビングで求愛し、メスがアームウェービングで服従を示すと、オスはメスの首筋に噛みつき、押さえつけるようにして交尾する。妊娠期間は約1ヶ月半。妊娠したメスは、穴を掘って一度に10〜30個の楕円形の卵を産む。産んだ後は穴を埋めて、放置。メスは体内に精子を保つことができるので、交尾からしばらく経った後に有精卵を産むことも。卵は、温度により60〜80日後に孵化する。飼育下では孵卵器を使って孵化させるが、交尾&受精していなければ無精卵となる。
ハッチ直後のバブーは全長10センチ未満で、体重は2.5〜3グラムだが、アダルトは全長48〜60センチ(尻尾を除いた体長は15〜18センチ)、体重は最低でも250グラムを超す。寿命は、野生では2〜3年、飼育下では5〜10年。
フトアゴの仲間〜アゴヒゲトカゲ属:
「アガマ科」の中に「アゴヒゲトカゲ属」(Pogona)があり、その中に我らの「フトアゴヒゲトカゲ」(Pogona
vitticeps)があるわけだけど、アゴヒゲトカゲ属として現在公認されている種は以下8つあるんだって。オーストラリアのそれぞれ異なる地域の出身で、見た目もちょっとずつ違う。楽しいなー、オーストラリア!!
(*)「体長」は尻尾を含めず、鼻先から尻尾の付け根までの「頭胴長」とします。
ヒガシアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona barbata
英名:Eastern または Common Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Cuvier、1829年
生息地:オーストラリアの東部と南部。多雨林や乾燥した低木地など。
フトアゴヒゲトカゲと比べて黒っぽく、トゲトゲも大きい。アゴヒゲトカゲ属の中で一番大きく、体長(*)20センチを超える個体も。
ローソン(ランキン)アゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona henrylawsoni または Pogona brevis
英名:Lawson's Bearded Dragon または Rankin's Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Wells & Wellington、1985年
生息地:オーストラリア北東部のクイーンズランド州。
フトアゴヒゲトカゲと比べて小さく、ヒゲも小さい。ペットとしてわずかに流通している。
ササメアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona microlepidota
英名:Small-scaled Bearded Dragon、または、Drysdale River Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Glauert、1952年
生息地:オーストラリア北西部のキンバリーという地域で、分布の範囲としては狭い。草や低木の森林など。
ヒガシアゴヒゲトカゲに似ているが、ヒガシアゴヒゲトカゲよりも小さい。アダルトの体長は約14センチ。また、他のアゴヒゲトカゲ属の仲間と比べて、アゴと背中のトゲトゲが少ない。
ニシアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona minima
英名:Western Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Loveridge、1933年
生息地:オーストラリア南西部。森林、荒野、乾燥した砂漠、海岸砂丘など。
ヒメアゴヒゲトカゲの亜種ではないかとする説もある。ミッチェルアゴヒゲトカゲに似ているが、ミッチェルアゴヒゲトカゲにある頭の大きなトゲトゲはない。アダルトの体長は約15センチ。
ヒメアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona minor
英名:Dwarf Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Sternfeld、1919年
生息地:オーストラリア西部から中央部。森林や砂漠など。
ニシアゴヒゲトカゲに似ているが、ニシアゴヒゲトカゲよりも手足と尻尾が短い。アダルトの体長は約15センチ。
ミッチェルアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona mitchelli
英名:Mitchell's Bearded Dragon または Northwest Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Badham、1976年
生息地:オーストラリア北西部。グレートサンディ砂漠を含む。
ヒメアゴヒゲトカゲの亜種ではないかとする説もある。アゴヒゲトカゲ属の中で一番小さく、アダルトの体長は14センチ弱。
ナラボーアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona nullarbor
英名:Nullarbor Bearded Dragon または Banded Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Badham、1976年
生息地:オーストラリア中南部で、分布の範囲としては狭い。海岸沿いでは、険しい崖や洞穴にも生息する。
背中に特徴的な白い帯があり、胴体の両脇には3〜7列のトゲトゲがある。アダルトの体長は約15センチ。
フトアゴヒゲトカゲ:
学名:Pogona vitticeps
英名:Inland または Central Bearded Dragon
発見したサイエンティスト&発見された年:Ernst Ahl、1926年
生息地:オーストラリア中央部から中南部。 乾燥した森林、低木地、岩石砂漠など。
アゴヒゲトカゲ属の中で、ペットとして最も広く流通しているのがコレ。アダルトの体長は15〜18センチ。
番外編〜ビッティキンアゴヒゲトカゲ/Vittikin's Bearded Dragon
フトアゴとローソンのハイブリッドで、ペットしてわずかに流通している。
ペットとしてのフトアゴ:
ペットとして広く流通し始めたのは1980年代後半。オーストラリアは野生動物の輸出入を禁止してるので、WC(Wild
Caught、野生を捕獲したもの)は存在せず、CB(Captive Bred、飼育下で繁殖したもの)だけ。色や模様により、大きく値段が変わる。詳細は下記の「モルフ」を参照。
丈夫で飼いやすいので、爬虫類飼育の入門種とされている。また、あまり触るとストレスになってしまうトカゲも多い中、この種類は自分から飼い主のヒザに乗って来たりと人懐こいのも魅力!
飼い始める前によくよく考えてみた方が良いことといえば・・・
活餌:コオロギやワームなどの活餌に抵抗がないか?<ところでみんな、「探偵!ナイトスクープ」のトカゲ少年、見た?めちゃ可愛かったよね!!ガンバレー!
スペース:ケージを置くのに充分なスペースがあるか?<アダルトになると鼻先から尻尾の先まで60センチ近くにもなり得るじょ!
お金・時間・労力:ケージや照明器具の初期設定はもちろん、永遠に続く電気代、活餌代、UVB蛍光灯の交換、定期的な寄生虫チェックなど、お金も掛かるし、ケージの掃除、活餌の調達&メンテナンスなど、時間&労力も掛かる。
根本的に犬や猫とは違う〜その1:人懐こいとは言っても、名前を呼んだら寄って来るわけじゃないし、しつけられるものでもない。
根本的に犬や猫とは違う〜その2:旅行や出張中に預かってくれる人を探すのも、爬虫類を診てくれる獣医さんを見つけるのも難しい。いきなり海外赴任になった場合なんかも、犬や猫なら一緒に連れて行く方法があるかもしれないけど、爬虫類は航空会社やら赴任先の出入国やらで制約があるかも・・・
その辺りの覚悟さえあれば、フトアゴは超オススメ!!いつも元気一杯&好奇心一杯だから、毎日見てても飽きないよ!
男のコと女のコの見分け方:
バブーの性別を見分けるのは難しい。半年を過ぎた頃からもっとわかるようになる。
フトアゴちゃんを片手で持ち、もう片方の手でそっと(<ここポイント)尻尾を持ち上げ、尻尾の内側のウロコがピンと張るようにする。排せつ腔の切り込みのすぐ下(尻尾側)に2つの盛り上がりがあれば男のコ。1つ、または何もなければ、おそらく女のコ。このビデオがわかりやすいYO。
よくわからなければ、今は諦めまSHOW。アダルトになれば以下のような特徴で自然とわかるから、ムリヤリやらないで!
男のコの方が女のコより全体的に大きい。特に頭は幅広くて、三角っぽい形。尻尾も太い。排せつ腔の幅が広い。大腿孔という、太モモの内側にあるポツポツも大きい。
(男のコと女のコの違いをわかりやすく示した写真を募集中!!写真の色や明るさを変えたり、矢印マークを入れたりは、こちらでできます。XXさん家のXXちゃんとクレジット入れますし、入れて欲しくなければ入れません)
成長の段階:
成長のスピードは個体によって大きく違うけど、最初の半年〜1年はグングン成長しまくり、1年半で性的に成熟、1年半〜2年で成長は止まるって感じかな?でも、すでに4歳とかのアダルトなのに、環境を改善したら急にまた大きくなった!なんて話もあるみたいよ。
バブー (全長30センチ以下/ハッチ〜3ヶ月〜6ヶ月):
ま、フツーは「ベビー」とか「ジュビナイル」と呼ぶんだけど、フトアゴ大百科では「バブー」で統一させて頂きまッス。頭デッカチで、トゲトゲも少なく、めちゃくちゃカワイー時期!そして何より、物凄い成長期・・・凄い食欲で、凄い勢いで脱皮しまくる<常にどこか白くなってる感じ。給餌&成長が全てみたいな時期で、ともかくアッという間に成長するから、シェルターやリーシュなど、大きくなったらまた改めて大きいサイズを買ってあげればいいやー、なんてバブーサイズを用意すると悔しい思いをするかも・・・
一方、 早くもこの時期から、積極的にご飯を追って食い付く強い個体と、ケージ仲間が食べ終わるのを待ってから残りものにあり付く弱い個体とに分かれ、社会的階級ができる。性別に関係なく、アームウェービングもよく見られる。そして、ご飯が足りないと、強く大きな個体が弱く小さな個体の手足や尻尾をかじっちゃうことが特に多いのもこの時期・・・<だから、基本的に同じケージ内での多頭飼いは、どの年齢でもオススメしないんですが!
サブアダルト (全長30〜45センチくらい/3ヶ月〜6ヶ月〜1年半):
超オオザッパに言って(あまり参考にしないのが吉)、ハッチ直後は全長10センチ未満、ハッチして3ヶ月で20〜30センチ、6ヶ月で30〜40センチ、成長し切ってアダルトになったといえるのは45センチ以上、1歳半〜2歳って感じかな?でも、前述の通り、成長のスピードは個体によって派手に違うので、サイズや月齢を特定して書くのはなかなか難しい・・・ともかく、このサブアダルトってのは、バブーとアダルトの中間全てと思って下さい。
この時期から、バブー時代によく見られた共食いの傾向は減って来て、アームウェービングも一旦あまりやらなくなる<特に男のコ。相変わらずグングン成長するけど、バブーの頃よりはそのスピードも落ちて来て、食べ物も活餌より野菜や果物中心になる(ハズ)。脱皮の頻度もグンと減る。
アダルト (全長45センチ以上/1年半〜2年〜):
1歳半で性的に成熟。この時期、ホルモンの変化により、栄養やエネルギーは体の成長よりも繁殖活動に使われるようになる。男のコは攻撃的になり、他の男のコと縄張り争いをして、女のコにヘッドボビングで求愛する。女のコはアームウェービングでそれに応える。また、この時期から毎年冬眠するようになる<通常、ハッチして最初の冬は冬眠しないから。
アダルトになって最初の3年ほど、つまり、年齢にして2〜5歳くらいが一番の繁殖適齢期。その後は徐々に繁殖率が落ち、7歳以降はほとんど繁殖しなくなる<特に女のコ。
フトアゴの行動&気持ち:
ヘッドボビング:威嚇や求愛で、頭を上下に動かすこと。合わせてアゴが真っ黒になることが多い。発情期の男のコがよくやる。
アームウェービング:服従を表して、腕をゆっくり回すこと。バブーや、男のコからのヘッドボビングに応えて、女のコがやることが多い。ケンカに負けた男のコも。
アゴを黒くする&膨らませる:威嚇、求愛、具合が悪い。理由もなくずっと黒くなってる場合は、要注意!
口をカーッと大きく開ける:威嚇。アゴを黒くして膨らませ、口を大きく開けるのが究極の激怒ポーズ!<このビデオ見て。ウケル!
口をボーッとしばらく開けっ放しにする:ゲーピングという。体温調節で熱を体外に出している。パンティングといって、合わせてアゴをフガフガ動かすことも。あまりにいつもやりまくってる場合は、暑過ぎるのかな?とケージの温度を見直してみた方が良いけど、バスキング中に時々やってるのなら健康な証拠!
シューッという音を出す:声は出ないんだけど、威嚇でシューッと空気の音を出すことはある。ちなみに、ゲップみたいな音はまた別。一瞬ノドを詰まらせてゲッとなり、その後、何ともなさそうなら大丈夫だけど、連続してゲップのようなシャックリのような音を出すのは異常。フトアゴは鳴きませんYO!!呼吸器感染か、ノドに何か詰まってるか・・・?今すぐ獣医さんへGO!
尻尾ビンタ:尻尾をムチのように振って、バチンと飼い主を叩く・・・ええ、ムカついてるんです<涙。
体を平べったくする:日光浴中にやるのは、表面積を広くしてUVBを吸収するため。その他、威嚇の時にも。体を平たく、なるべく大きく見せようとするんだね。
体を細くする:上空を飛行機が・・・!みたいな時、首を傾げて空を見据えながら、体をギュッと細くする。野生だったら、上空を天敵の鷹が・・・!みたいなシチュエーションで、なるべく小さくなって隠れようとしてるんでしょうね。もっと本気で怖くなると、もはや空を見上げる余裕もなく、ジッと何かにつかまって、手足&尻尾もギュッとなり、目をつぶって現実逃避に入る。
体色を微妙に変える:寒いので光を吸収して温まりたい時は黒っぽく、暑いので光を反射してこれ以上は温まりたくない時は白っぽくなる<「白っぽく」というのは、お腹は真っ白、背中の色は鮮やかって意味ね。温度の他、気分や体調によっても体色は変わる。お腹にできる模様をストレスマークと呼ぶくらいだから、リラックスしてると白っぽくなる気がするけど、どうかな?一方、温浴中に溺れ掛けて危機一髪の時、ゾッとするくらい鮮やかな黄金色になったこともあるよ<詳細はこちら。そしたら、似たようなエピソードが結構あることがわかった。つまり、かなりヤバいシチュエーションで、真っ白になる、と・・・。とりあえず、アゴが真っ黒とか、体が真っ白とか、いつもと明らかに違う場合は要注意!
ストレスマーク:お腹にできる () () () ←こんな模様。その名の通り、ストレスを感じる時に出ると言われてるけど、どうでSHOW?マイカイジュはしょっちゅう出てるけど。バブーの頃なんか、常に出てたよ。ま、お腹にストレスマークが出るのとアゴが真っ黒になる現象は通常セットで起こるので、それを指してるのかな?
タンテースティング:犬が匂いをクンクン嗅ぐのと同じノリで、それが何なのか知ろうとして、舌の先でそっと舐めること。実際には舌を対象物に付けず、舌を出すだけのことも多い。
尻尾の先をピンと上に向ける:犬が耳をピンと立てるのと同じノリで、警戒&集中。
目玉を飛び出させる:これは結構ビビるよ!ホントにボコンと飛び出るんだっちゅ。でも、たいていは数秒ですぐ元に戻しちゃう。体温調節とも言われてるけど、よくわからない。目がゴロゴロする時に人間が目をパチパチさせたり、鼻がムズムズする時に鼻周辺をゴニョゴニョ動かすのと似てる気がする。脱皮中にやることが多い。そして、自分の世界に入ってる(=リラックスしている)時にやることが多いと思う。出目になってる間は多分ちゃんと見えてないから、天敵に狙われそうな状況ではやらないだろうしね。
目をジーッと閉じる:寝てるわけでもないのに、目をジーッと閉じるのは、怖い時とか(現実逃避みたいな)病気の時とか。しょっちゅうやってる場合は要注意!ただし、バスキング中なんかにリラックスして目を閉じてることもある。よく観察してれば、違いはすぐにわかるよ。
ガリガリ床を掘る:1歳過ぎの女のコなら、お腹に卵ができたかも・・・?交尾してなくても無精卵を産むよ。ちゃんと産卵できる環境が整ってないと、卵が詰まって死んじゃうんだって!
モルフとは?
爬虫類の色や模様やウロコのいろいろをモルフと言います。サンドファイアとかトランスルーセントとかジャーマン・ジャイアントとか。
生物分類学に沿った「種」とはまた別の話で(詳細は上記の「フトアゴの仲間〜アゴヒゲトカゲ属」を参照)、まあ、もっとしょうもないというか、人間が掛け合わせて掛け合わせて作ってる、あえて言うなら「品種」かね?しかも、珍しいバブーが生まれるとブリーダーが「新しいモルフが誕生!」なんて勝手に命名してることも多いし、または、そのモルフの血は全く引いてないのにそれっぽい色だからって勝手に既存のモルフ名を使って売ってることもある。
というわけで、モルフってのもなかなかいい加減なモンではあるんだけど、これはいい加減に扱ってるからいい加減になっちゃってるだけなのだ。
まず声を大にして言いたいのは、本来のモルフってのは見た目による分別ではなく、もっと血統とか遺伝子みたいな話だってこと。パグだって、顔がレーズンみたいに黒くて潰れてるからパグなのではなく(まあそれもあるけど)血統がパグだからパグなんじゃん。サンドファイアだって、黄金色っぽいからサンドファイアなのではなく、サンドファイアの血統だからサンドファイアなのだ。
だから、ネット掲示板なんかで、自分のフトアゴの写真を載せて「このコのモルフは何ですか?」って質問してる人がいるけど、そして、それを知りたい気持ちはよーくわかるけど、その質問は少しトンチンカンかも。モルフは見た目だけで判断できるものじゃないから。せいぜい「ウロコがスムーズだから、レザーバックっぽいですね」程度のことしか言えない。そのコを繁殖したブリーダーさんに聞いて、血統を辿るしかないの。
「血統なんてどーでもEじゃん、自分の気に入ったコを見つけて育てるだけなんだからサ」って意見はモットモだし、私も激しく同意だけど、でも、もっと壮大な目線で考えた場合、モルフってのもバカにできないのかもと思う。
というのは、犬だって大昔は掛け合わせて掛け合わせて、今、パグだのチワワだのいろいろあるわけでしょ。犬は人間との歴史が比較にならないほど長いから、品種(犬種)分けがもっとずーっと進んでる&確立してるだけじゃないかね?
つまり、今フトアゴのブリーダーさんたちがレザーバックだのシルクバックだの確立させようと頑張ってるのは、大昔、犬のブリーダーさんたちが顔が黒くて潰れたヤツラや特別チビッこいヤツラを掛け合わせて掛け合わせてパグやチワワを確立させたのと同じことじゃないかね?
そして、フトアゴ界にも犬のケネルクラブにあたる品種を管理する団体ができれば、勝手に新しいモルフを命名したり無関係のモルフ名を使って商売したりの悪徳ブリーダーもいなくなるんじゃないかね?
と言いつつ、これはまだまだ妄想も良いトコの話で、犬と比較すること自体バカというかナンセンスかもしれない。現在のフトアゴにおけるモルフの違いは、もちろん、同じ犬でも「パグ
VS チワワ」ってほどハッキリした差があるわけではなく、感覚的には、同じパグでも「フォーンのパグ VS 黒のパグ」程度だと思う。
てゆーか、犬って親子やキョウダイの近親交配は避けつつも、基本は同じ犬種同士を掛け合わせて行くじゃん。んで、血統書だのドッグショーだのフザけたもんがある。
一方のフトアゴは、ペットとしての歴史はせいぜいココ20年ちょっとで、フトアゴ専門ブリーダーなんて人々が現れていろんなモルフがどうの言い出したのはせいぜいココ10年ちょっと。だから、まだまだ近親交配の確率が高くて、同じモルフ同士を掛け合わせるのはやや危険。健康で安定したモルフ確立のためには、長い年月を掛けて、なるべく広い遺伝子プールの中で、少しずつ少しずつ掛け合わせて行くしかないんじゃないかな。フトアゴという愛すべき種の末永い繁栄のためにも・・・
モルフのいろいろ:
野生のフトアゴはオーストラリア中央部から中南部まで広く分布していて、ここは乾燥した森林、低木地、岩石砂漠、熱帯草原、山岳、疎林と、多種多様の表情があるんだって。それで、もちろんみんな同じフトアゴヒゲトカゲ(Pogona
vitticeps)には違いないんだけど、異なる生息地のフトアゴはそれぞれの環境に適応するよう異なる進化の歴史を歩んで来た。天敵から身を隠すため、中部の赤っぽい砂漠のヤツラはより赤く、南部の黄色っぽい砂漠のヤツラはより黄色く・・・自然選択ってヤツですね!
一方、フトアゴっちゅうもんがペットとしてアメリカに登場したのは1980年代後半だけど、当時は茶色〜黄褐色のいわゆる「ノーマル」しかいなかった。(情報源がアメリカの本やらサイトばかりなので、どうしてもアメリカ中心の話になっちゃうの・・・ゴメンちゃ!)それが1990年代に入って前述のもっとカラフルなヤツラが輸入され(*)人為的な掛け合わせが繰り返されて、各種の突然変異なんかも現れ、それがまたさらに掛け合わされて、今日の超カラフルなモルフのいろいろができたんだって。
(*)オーストラリアはとっくの昔に野生動物の輸出入を全面的に禁止してたので、ほとんどが闇取引。1990年代前半はフトアゴに限らず爬虫類全般の密輸入全盛期で、密輸業者
VS アメリカ合衆国魚類野生生物局の壮絶なイタチゴッコが繰り広げられてたらしい。マイカイジュのご先祖さまの中にも、暗いダンボールにギュウギュウに押し込められて海を渡って来たコとかいたんだろうなあ・・・
というわけで、飼育下フトアゴにおけるモルフってのはココ10年、15年の歴史しかなく、まだまだ発展途上というか確立されてないというか激しくイイ加減・・・ではあるんだけど、そんな中でも認識されつつあるモルフを大まか&ランダムに並べてみたいと思います。今後、もっともっとスンゴイことになって来るに違いない!
ノーマル/Normal (茶色〜黄褐色):
前述の通り、1980年代後半、最初にアメリカへ輸入されて来たヤツラがコレ。落ち着いた地味な色で、これはこれでカワイイ。でも、鮮やかなヤツラの方が人気で積極的に繁殖されるため、最近は「典型的なノーマル」が逆に少なくなって来てるんだって。
それに、最近のノーマルは大体ご先祖さまのどこかに赤や黄金色がいる。ぶっちゃけ、あまりカラーの出なかったコがノーマルとして安めに売り出されてるだけだから。つまり、カラフルな遺伝子は受け継いでて、成長と共に劇的な変化を遂げるコがいたり、ノーマルの親からいきなり鮮やかなバブーが誕生したりもするんだって。
サンドファイア/Sandfire (赤〜オレンジ〜黄金色〜黄色):
今一番広く認識されていて、そしてだからこそ、その名が乱用されることも一番多いのがこのモルフでしょう。もともとはカリフォルニア州のサンドファイア・ドラゴン・ランチ/Sandfire
Dragon Ranchで生み出された血筋。
このサンドファイア・ドラゴン・ランチってのはフトアゴ・ブリーダーの中でも老舗中の老舗で、まあ、長崎カステラなら福砂屋みたいな。そこの創始者のロバート・メルー/Robert
Mailloux氏(<「メルー」って読み方&日本語表記は猛烈適当)は、サンドファイアのモルフはもちろん、北米全体におけるフトアゴ繁殖の父みたいな存在らしい・・・フトアゴ界のドン。私はサンディエゴの爬虫類博覧会でメルー氏を見掛けたことがあるけど、見た目は温和そうなおじいちゃんだったよ。とりあえず心の中で敬礼しといた。
というわけで、サンドファイアってのはメーカーというかブランドというかレーベル的な要素の強いモルフとも言えるかも。
サンバースト/Sunburst (黄色):
カリフォルニア州のドラゴンズ・デン/Dragon's Denで生み出された、80‐90%黄色の血筋。
このドラゴンズ・デンってのもわりと老舗のブリーダーで、そこのケビン・ダン/Kevin Dunn氏は、前述のサンドファイア・ドラゴン・ランチでロバート・メルー氏とチーム組んでやってたんだよ。少なくとも肩書き上は、今もサンドファイア・ランチのフトアゴ顧問とかになってた気がする<適当な記憶。
サンドファイアと同じく、これもレーベル的なモーフだね。
ジャーマン・ジャイアント/German Giant (サイズが大きく、多産):
とりあえずサイズが大きくて、大きな男のコだと66センチにも。でも頭はそれほど大きくない。というか、身体が大きい分、普通のフトアゴに比べて頭デッカチさが目立たないのかな?
多産で、1回のクラッチで50個以上の卵を産むとか。68個なんて記録もあるらしい。だから、繁殖力を高めるために掛け合わされることも多い。また、丈夫で強く、個体によってはやや気性が荒い。
色はノーマルと同じで茶色〜黄褐色。目玉はシルバーっぽいゴールドで、瞳孔とのコントラストが目立つ。
その名の通り、もともとはドイツで生み出されたモルフで、フロリダ州のピート・ワイス/Pete Weis氏がアメリカに持ち込んだらしい。彼も前述のロバート・メルー氏やケビン・ダン氏と並んで北米のフトアゴ繁殖における大御所のハズだけど(1990年代から活躍)ウェブサイトが見つからないので、もしかしてもう引退したのかな?
ハイポメラニスティック/Hypomelanistic (黒が少なく、白っぽい、クリアネイル):
ハイポと略される。劣性遺伝。「ハイポ」とは低いとか少ないという意味で(ちなみに、その逆、高いとか多いは「ハイパー」)、「メラニスティック」は黒い色素のこと。人間用の美白クリームなんかでも、メラニンの生成を抑える美白成分がどうのこうの、ってよくありますよね<メラニスティックとメラニン、同じ語源です、ええ。
というわけで、ハイポメラニスティックは、黒い色素が少なく、白っぽい。そして、黒が邪魔しない分、赤や黄色が鮮やかに出る傾向あり。
ただし、白っぽいからといってハイポとは限らない。見た目&表現が似ていても、実際に遺伝子を引き継いでいるかどうかはまた別の問題だから。本物の100%ハイポは、手足の爪20本全てが白く(いわゆるクリアネイル)、肩の部分も青みがかった灰色。1本でも爪が黒ければ、本来はハイポとは呼べない。
一方、「ヘテロハイポ」(Heterozygous for Hypo / Het. Hypo)というのは、ハイポの遺伝子を持ちながら、その特徴が表現されていないこと。つまり、見た目は、多少ハイポっぽくても、基本的にノーマル<20本全てがクリアネイルではない。でも、ハイポの遺伝子を持っていて、次の世代に受け継がれるので、ブリーディングの観点で価値がある。理論上は(実際はこんなピッタリではない)、以下のような確率で出るハズ:
(親→子。%だらけになると読みにくいので、便宜上、「100%ハイポ」のことをココでは「完全ハイポ」と呼ぶことにします)
完全ハイポ x 完全ハイポ → 完全ハイポ(100%)
完全ハイポ x ヘテロハイポ → 完全ハイポ(50%) + ヘテロハイポ(50%)
完全ハイポ x ノーマル → ヘテロハイポ(100%)
ヘテロハイポ x ヘテロハイポ → 完全ハイポ(25%) + ヘテロハイポ(50%) + ノーマル(25%) ・・・*1
ヘテロハイポ x ノーマル → ヘテロハイポ(50%) + ノーマル(50%) ・・・*2
前述の通り、ヘテロハイポは、見た目だけでノーマルと区別することはできない。だから、*印のところ、ヘテロハイポがXX%、ノーマルがXX%、って一応分けてあるけど、実際のところ、どのコがどっち、と分けられない。だから、*1の非完全ハイポのグループをまとめて「66%
Possible Het. Hypo」、つまり、「3分の2の確率で、ヘテロハイポ」と呼び、*2のグループ(こちらは最初から全員が非完全ハイポ)を「50%
Possible Het. Hypo」、つまり、「半分の確率で、ヘテロハイポ」と呼ぶそうです。
・・・って、ココまで来ると、そんなん信用できるか、バカヤロー!って話になって来るけど、そうなんです、信用できませんYO。てゆーか、もともとへテロというのは見た目じゃ判断できないのだから、ブリーダーさんの言うことを丸ごと信用するしかない。
ともかく、100%(完全)ハイポかどうか?というのだけ、YES OR NO?状態で、20本全てがクリアネイルかどうか?だけで判断可能・・・というのが定説だけど、そこら辺からしてすでに怪しいのがフツーに出回ってるのが現状ですね・・・ま、いいか。
トランスルーセント/Translucent (半透明、黒目):
トランスと略される。劣性遺伝。その名の通り、ウロコが半透明。目は真っ黒。エイリアンっぽい。ハイポは黒い色素だったけど、トランスは白い色素が欠如してるんだって。そういえば、水彩画で白を混ぜた途端、濁りますものね!!<って、関係ない?
特に、バブーはその半透明っぷりが顕著で、内臓が透けて見えそうなヤツラもいる。大人になると、皮も厚くなるせいか、バブーの時ほど半透明な感じはなくなる。ちなみに、黒目っぷりは、大人になっても変わらない。
「ヘテロトランス」(Heterozygous for Trans / Het. Trans)もヘテロハイポと同じ考え方のハズだけど、弱いコが出やすいから、あまりトランスやヘテロトランス同士を掛け合わせるな、と言われる。ま、近縁同士を掛け合わせちゃダメなのは、どのモルフでも同じだと思うけど、なぜかハイポ以上にトランスに関して要注意!ってよく聞く気がするよ。ハイポよりトランスの方が歴史が浅いのかな?
ハイポトランスルーセント/Hypotranslucent (黒が少なく、半透明、クリアネイル、黒目):
ハイポトランスと略され、その名の通り、ハイポとトランスの特徴を併せ持つ。つまり、黒が少なくて半透明、クリアネイルで黒目。ただのトランス以上にエイリアンっぽくて、この世のものとは思えない不思議な美しさがある。カリフォルニア州のファントム・ドラゴンズ/Phantom
Dragonsこと、ジョッシュ・ダブンバーガー/Josh Dovenbarger氏が確立したモルフ。
「ヘテロハイポトランス」に関しては、一筋縄では行かない・・・100%(完全)ハイポトランスではないヘテロの場合、「トランス・ヘテロハイポ」(見た目はただのトランス、でもハイポの遺伝子も持ってる)、「ハイポ・ヘテロトランス」(見た目はただのハイポ、でもトランスの遺伝子も持ってる)、「ヘテロトランス・ヘテロハイポ」(見た目はノーマル、でもトランスとハイポの遺伝子を持ってる)の3種類があるから。
さー、わけわかんなくなって来ましたね!!ま、どうせ理論上の話に過ぎませんYO!!
完全ハイポトランス x 完全ハイポトランス → 完全ハイポトランス(100%)
完全ハイポトランス x トランス・ヘテロハイポ → 完全ハイポトランス(50%) + トランス・ヘテロハイポ(50%)
完全ハイポトランス x ハイポ・ヘテロトランス → 完全ハイポトランス(50%) + ハイポ・ヘテロトランス(50%)
完全ハイポトランス x ノーマル → ヘテロトランス・ヘテロハイポ(100%)
トランス・ヘテロハイポ x ハイポ・ヘテロトランス → 完全ハイポトランス(25%) + トランス・ヘテロハイポ(25%) +
ハイポ・ヘテロトランス(25%) + ヘテロトランス・ヘテロハイポ(25%)
組み合わせは無限にあるね・・・
ルーシスティック/Leucistic (ほぼ真っ白、模様がほとんどない、クリアネイル):
リューシスティックと表記されることもあり、リューシとも略される。
ただし、本来の意味でのルーシスティック(白変種)というのは、メラニンが少なく、体のほとんどの部分が白い動物のこと(ちなみに「アルビノ」というのは、メラニンが完全に欠如していて、目玉も赤く、白変種とはまた全く異質のもの)。サーカスでオナジミのホワイトライオンはライオンの、ホワイトタイガーはベンガルトラの白変種。脊椎動物のほとんどの種において白変種の形を取るグループが存在するらしいのだけど、遺伝学的な定義通りのルーシスティック、つまり白変種のフトアゴというのは、実はまだ発見&証明されてないんだって。
だから、市場にルーシスティックとして出回ってるフトアゴの99%も、厳密に言えば「Marketed
Leucistic」(商品名ルーシスティック?)と呼ぶべきらしい。まあ、たまたま「ルーシスティック」って名前になっちゃったモルフだけど、白変種とはまた違うよ、ってことだね。
というわけで、ルーシスティックと呼ばれるモルフだけど、これはこれできちんと実在する血統であり、実は、凄く薄い色のハイポメラニスティックで(ハイポだからってルーシスティックとも限らないけど、ルーシスティックはみんなハイポ)、ほぼ真っ白。ハッチした瞬間からアダルトになるまで、ずっと白。目の周辺だけ、淡いピンクや黄色だったりする。また、模様がほとんどなくて、20本ともクリアネイル。
でも、もしかしたら本物の白変種かもしれないじゃん?ついに発見されちゃったかもしれないじゃん?・・・これを確かめる唯一の方法は、ハイポと掛け合わせてみること。本物の白変種とハイポは、見た目は似てるけど、遺伝子の特徴は全く違うため、普通の見た目のバブーが生まれるハズ。というのは、異なる遺伝子の両親なので、そのバブーは密かに片親から白変種の遺伝子、もう片方の親からハイポの遺伝子を受け継ぎつつも(つまり、白変種とハイポのダブル・ヘテロ)、見た目は白変種ともハイポとも表現されないから。そんなダブル・ヘテロのバブーを次の世代で白変種と掛け合わせると(ま、そんなに伝説の白変種フトアゴが見つかるのか?って話なんだけど)一部白変種のバブー、ハイポと掛け合わせると一部ハイポのバブーが生まれるハズ。
一方、商品名ルーシスティック x ハイポだった場合、クリアネイルのバブーが生まれて、両親共にハイポだったことが証明されちゃうってわけ。
面白いですね!!
レザーバック/Leatherback (ウロコがスムーズで、レザーのような感触):
その名の通り、ええ。お財布やハンドバッグにイイ感じ。ウロコがスムーズな分、色が鮮やかに出ると言われるけど、どうでSHOW?
厳密に言うと、イタリアンレザーバックとアメリカンスムージーの2種類がある。イタリアンレザーバックはイタリアのブリーダー、アレサンドロ/Alessandro氏が生み出した相互優性遺伝のモルフで、アメリカンスムージーはどのブリーダーだか知らないけど(知ってる人がいたら教えてちゃぶだい!)アメリカ出身の劣性遺伝のモルフ。一般的に、レザーバックと言えばイタリアンレザーバックを指し、現に、アメリカンスムージーよりイタリアンレザーバックの方が高額で取引される。
というのは、相互優性遺伝のイタリアンレザーバックは、そのコ一人だけでその特徴をすぐ次の世代に引き継がせることができるから。イタリアンレザーバックとノーマルを掛け合わせると、半分がレザーバック、半分がノーマルになる。「見た目はノーマルだけど実はレザーバックの遺伝子を隠し持ってる」というヘテロがないんだよ。見た目でノーマルと区別できるので、「XXの確率でヘテロ」なんてヤヤコシイこともない。レザーバックの遺伝子を受け継いだコは見た目もレザーバックだし、受け継がなかったコは見た目も遺伝子もノーマル。
イタリアンレザーバックとイタリアンレザーバックを掛け合わせると・・・って話は、下記の「シルクバック」を参照。ついさきほどサラッと「ヘテロがない」なんて書いたけど、実は・・・!!<だから、下記の「シルクバック」を参照だっちゅ。
一方、劣性遺伝のアメリカンスムージーの場合、両親共にスムージーの遺伝子を持っていないとスムージーは生まれない。考え方は上記の「ハイポメラニスティック」と同じ。
ペンシルバニア州の老舗ブリーダー、ダッチュー/Dachiu夫妻は、2006年後半に前述のアレサンドロ氏から初めてイタリアンレザーバックを輸入したらしいので(同じ頃、他のブリーダーもドンドン輸入してたんだろうけど)、アメリカで市場に出回り始めたのは2007〜2008年頃かな?
シルクバック/Silkback (ウロコがなく、ツルツル):
これまたその名の通り。愛称はシルキー。ウロコがなくてツルツル。横腹に並ぶトゲトゲも全くない。ナニこれ、フトアゴ?!ってレベルでビックリする。ウロコが全くないだけに、レザーバック以上に色が鮮やかに出ると言われるけど、これまたどうでSHOW?イタリアンレザーバックと同じく、イタリアのアレサンドロ氏が確立したモルフ。
正確なことはわからないけど、私の記憶によると、アメリカで市場に出回り始めたのは2009年前後だったと思う。少なくとも、私がマイカイジュをお迎えした2008年秋には、まだそんなに出回ってなかったハズ・・・少しずつネットの掲示板などで話題になり始めて、「ウロコが全然ないってどーゆーこと?」とか思ってたら、誰かが写真を貼って、初めて見るその風貌にブッタマゲて、「こんなの自然に反してる!可哀相!!」などと怒る人もいて、私も何だか考えさせられて、そうこうしてる内にイベントでついに実物も見て、その値段に驚いて、そして、数年後のイベントではその値段の暴落振りに寂しくなって・・・と、私の中では、新登場モルフの騒動と盛衰を垣間見たという意味で、少し感慨深いモルフだったりする。詳細は:その1、その2、その3。
食べ物など基本はフツーのフトアゴと全く同じだけど、湿度はちょっとだけ高め、バスキング直下の温度はちょっとだけ低め、UVB蛍光灯からの距離はちょっとだけ遠めにすると良いらしい。また、交尾やケンカで噛まれるとすぐ皮膚が破れて怪我しちゃうとか・・・ウロコがないから、ええ。
相互優性遺伝のイタリアンレザーバック同士を掛け合わせると生まれる。理論上は、こんな感じ:
レザーバック x レザーバック → シルクバック(25%) + レザーバック(50%) + ノーマル(25%)
レザーバック x ノーマル → レザーバック(50%) + ノーマル(50%)
そう、レザーバックは、シルクバックのヘテロだったのだ!!でも、ノーマルと見た目で区別できるヘテロってわけ<明らかにウロコが違うから。言い換えると、シルクバックは、レザーバックの完全型(?)ということになる。
シルクバック x シルクバック → シルクバック(100%)
シルクバック x レザーバック → シルクバック(50%) + レザーバック(50%)
シルクバック x ノーマル → レザーバック(100%)
ほら、上記の「ハイポメラニスティック」と見比べてみて。シルクバックを「完全シルク」、レザーバックを「ヘテロシルク」とでも置き換えてみると、同じ理論になってるでしょう?
(・・・という考え方でいいハズ。違うぞ!って人がいたら、マジ教えて下さい!!)
ウィットブリッツ/Witblits (南アフリカ出身、全く模様がない):
これはまだ数が出回っていなくて認知度も低いけど、南アフリカの獣医ジャック・オデル/Jacques
O'Dell氏が生み出した全く模様がないモルフ。劣性遺伝。「ウィットブリッツ」という名前の由来は、南アフリカ原産の白っぽい透明のお酒らしい。
(2010年2月、当時はまだ新しかったウィットブリッツについて書いたブログがあるので、ご興味あれば読んでみて下さい:こちら。写真もあるよ)
ハッチした瞬間から頭も体も模様ナシで、成長してもずっとそのまま。目から耳に続く線、肩の黒っぽいトコとかも全くナシ。ただし、ないのは模様であって、色はある。黄褐色のヤツラとか。でも、今のところ、薄めがほとんどみたい。
2004年にフトアゴのブリーディングを始めたというジャック氏によると、南アフリカのフトアゴ界にはハイポやルーシスティック、黄色のイエロー何とかや真っ赤の何とかブラッドなど、カッコイイ名前が付いてるようなヤツラは全然いなくて、ほとんどノーマルなんだって。そんな中、ジャック氏はどうにか「イエロー系」と「薄い色系」のブリーディングを進めていたんだけど、2008年11月、突然、あるクラッチからこの模様なしバブーたちがハッチした。彼らはどこか奇妙な見た目で、特に白いコは紙並みに真っ白だったらしい。両親は「薄い色系」のブリーディングに使っていた2人で、薄めの色といえど基本はノーマル。しかし、その後も同じ2人を掛け合わせると、コンスタントに25%の割合で模様なしバブーがハッチしたそうで、この両親は見た目ノーマルだけど、実はウィットブリッツ(というか、のちにウィットブリッツと名づけられる遺伝子)のヘテロだったってわけ。
その後、何世代かに渡って観察を続けたところ、ウィットブリッツは劣性遺伝らしいことがわかった。つまり:
完全ウィットブリッツ x 完全ウィットブリッツ → 完全ウィットブリッツ(100%)
完全ウィットブリッツ x ヘテロウィットブリッツ → 完全ウィットブリッツ(50%) + ヘテロウィットブリッツ(50%)
ヘテロウィットブリッツ x ヘテロウィットブリッツ → 完全ウィットブリッツ(25%) + ヘテロウィットブリッツ(50%) + ノーマル(25%)
新しいモルフの誕生って、こんな感じなんだー、って何だか興味深いよね!ジャック氏いわく、今後、真っ白のウィットブリッツ、レザーバックのウィットブリッツ、濃いオレンジやレッドのウィットブリッツ、真っ黒のウィットブリッツなどを生み出して行きたいらしい。
ところで、ウィットブリッツの話になると、ネット上のみんながよく「日本のシルバーバックに似てるけど、違うのかな?」と話してるんだけど、日本のシルバーバックって何かね?ハチクラさんのサイトでそれらしきものの写真だけ見たけど、詳細をよく知らないの<教えてちゃぶだい。
そして、ジャック氏によると、その答えは「ノー」らしい。というのは、2011年5月、前述のハイポトランスルーセントの父、ファントム・ドラゴンズのジョッシュ・ダブンバーガー氏が、シルバーバックのヘテロとウィットブリッツのヘテロを掛け合わせたところ、模様なしバブーはハッチしなかったから・・・同じ遺伝子のヘテロ同士なら、25%の割合でハッチするハズ。だから、シルバーバックとウィットブリッツは、見た目は似ていても、異なる遺伝子であることが証明されたってわけ・・・上記の「ルーシスティック」でも似たような話があったけど、面白いね!!
ダナー/Dunner (尻尾に縦方向のストライプ、ウロコの向きがメチャクチャ):
これまたわりと新しいけど、イタリアンレザーバック以来の相互優性遺伝のモルフってことで話題沸騰中<一部で。上記の「レザーバック」でも書いたけど、相互優先遺伝というのは、そのコ一人だけでその特徴をすぐ次の世代に引き継がせることができるので(ノーマルと掛け合わせても、50%の割合でダナーが生まれる)、増え方が速いし、何より、インブリーディング(近親交配)の必要がないから健康でイイ。
前述の「サンバースト」という鮮やかな黄色のモルフを作り出したドラゴンズ・デンのケビン・ダン氏によって、2011年に発表されたばかりのモルフ。名前もケビン氏のラストネーム「Dunn」から名づけられたんだって。実は私、ロサンゼルスの爬虫類イベントでご本人に会いました。詳細はこちら。
尻尾に縦方向(背骨に平行)のストライプが入る。また、ヒゲやお腹、尻尾のウロコの向きが揃っていなくて、メチャクチャ。お腹なんか、ネコの舌みたいな肌触りらしい。そして、お腹にできる
() () () ←この模様、通称ストレスマークが、○○○←こんな感じで真ん丸。てゆーか、これもモルフの一部だったんだね・・・
私は怪獣チックなフトアゴが好きなんだけど(トゲトゲなんか大きければ大きいほどイイ!みたいな)、ダナーは全体的に模様が複雑で、何となく私好みのモルフだと思ったよ。
その他諸々:
・・・というわけでいろんなモルフがあるけど、ハイポレザー、トランスレザーなど、これの組み合わせもたくさんある<と、一文で済ませて省略!!
それから、レッド、ブラッド(血のように真っ赤)、ゴールド、オレンジ、イエロー、スノー(白っぽい)、パステル(薄いピンクやオレンジなど)など、色のバリエーションもドッサリあるし、タイガー(背中に縞々、背骨に垂直)、ストライプ(背中に縞々、背骨に平行)など、模様のバリエーションもたくさんあるし、ゴールドアイリス(目玉の茶色っぽい部分が銀色っぽい金色)なんてのも・・・この辺りは、モルフや血筋というより、「特徴」だと思うけど。
また、ランダムな突然変異で・・・
パープル、ブルー、アクア/Purple, Blue, Aqua:
紫というか青というか。オレゴン州の大御所ブリーダー、ブラッド・バンク・ドラゴンズ/Blood Bank Dragonsのスティーブン・バーンズ/Steven
Barnes氏が開発中。トランス系の親からたまーに出るそうで(法則なし)、でも、内臓が透けて黒ずんで見えるのとはまた違うらしい<それをパープルとして売ってる悪徳ブリーダーもいるので要注意、とのこと。
パラドックス/Paradox:
これはよくわからない。おなじみファントム・ドラゴンズのジョッシュ・ダブンバーガー氏が開発中。ハイポとトランスの親から2000人に1人くらいの割合で出るとか。しかし、パラドックス同士を掛け合わせても、パラドックスは出ないらしい・・・<だからホントにランダム&法則なしで、今のところは謎。
パイド、パイボールド/Pied, Piebald:
白いブチが入る。これはパープルやパラドックス以上に、めちゃくちゃ珍しいそうで、キメラ(もともと双子になるハズだった2人が1人に融合・・・ホントかいな?)かもしれないという説も・・・これまたブラッド・バンク・ドラゴンズのスティーブン・バーンズ氏と、ファントム・ドラゴンズのジョッシュ・ダブンバーガー氏が開発中。
イメージ的には、サンドファイア・ドラゴン・ランチのロバート・メルー氏やドラゴンズ・デンのケビン・ダン氏が、マーティン・スコセッシやフランシス・フォード・コッポラで、ファントム・ドラゴンズのジョッシュ・ダブンバーガー氏やブラッド・バンク・ドラゴンズのスティーブン・バーンズ氏が、クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲス、みたいな?んで、イタリアのアレサンドロ氏や南アフリカのジャック・オデル氏が、海外から殴り込みを掛けてるから、あー、誰だろ、ダニー・ボイルやリュック・ベッソン?・・・って、トカゲサイトでいきなり映画の譬えとか出してスミマセン<しかも微妙に古い?ふははは!!
そして・・・
アルビノ/Albino:
ええ、いるんですよ、アルビノのフトアゴ<画像検索してみて。目玉も赤い。まさにアルビノ。でも、フトアゴは紫外線が絶対必要なのに、アルビノは紫外線に弱い・・・だからせっかく生まれても、繁殖はおろか、アダルトになる前にほとんど死んじゃうんだって。確かに、アダルトのアルビノの写真は見たことない・・・<誰か見つけたら教えてちゃぶだい。
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とりあえず、このページは完成とします<また新たなモルフ登場で追記とかあるかもしれないけど。めちゃスクロールダウンしなくちゃいけなくて超読みにくいのに、頑張って読んで下さった皆さん、ありがとかげございました!
次は「病気&怪我」のページを完成させ、気力が残ってたら「交尾&繁殖」のページも加え、そしたら、このページも含めて、全てのページを複数のページに区切って写真を入れるつもりです・・・長い道のりだけど、今後ともヨロシク!!
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